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INTERVIEWS WITH INVESTORS

(2015/11 取材)

重要なのはマーケットの大きさとチーム

長南 先ほどの高校生に「最後に何か宮田さんに質問したい人はいますか」って聞いたら、「失敗したらどうするんですか」って小声で聞いてきた人がいたんですよ。それで「失敗してもお金は返さないよ」って言ったら、「えぇっ!返さなくて良いんですか!?」っていう感じでした(笑)

宮田 若者には、「イチローに比べたら俺たち、めっちゃリスク低いよ」とよく言います。彼は野球だけの一本足打法じゃないですか。でも僕らはポートフォリオを組んでいるので、ものすごくリスク分散はされているわけですよね。それでだめだったら、もうスキルの問題だから辞めた方がいいわけですけど、リスク分散ができているという意味では、ベンチャー投資って野球選手のように一つにベットしているよりも遥かにリスク分散されていますよね。

長南 アメリカでは、起業家というかスタートアップの女性も多いですか。この前、サンフランシスコの日経新聞の記者の方に会いにインキュベーションオフィスを訪ねたら、女性エンジニアがすごく多くてびっくりしたんですけど。

宮田 日本と同じですよ。基本的には男中心社会。女性の割合はやっぱり10〜20%ですよね。

長南 何を見て投資されていますか。人なのか、ビジネスなのか。マーケットが大きいかどうかというお話もされていましたよね。

宮田 僕らは結構色々なパラメーターを見ていて、マーケットとプロダクトとチーム、それと競合環境と売上とEXIT環境と、僕らとのフィット感。色々ありますけど、すごくシンプルに言うと、マーケットとチームの2つですね。マーケットの大きさはすごく意識しています。会社の数がものすごく多いので、日本みたいに分かりやすくNo.1には中々ならないわけですよね。でも最低1,000億円のマーケットがあれば、1%取れれば10億円だし、10%のマーケットシェアまでは中々取れないんだけど10%取れれば100億円っていう世界でやれば、何らかのEXITは取れる。マーケットが大きくてディスラプタブル、要するに、変わろうとしているかどうかってすごく大事で、変わる瞬間の直前期かどうかっていうのはすごく意識しています。だから、「この案件はまだ早過ぎるよね」とか「今じゃない」とか、「やっぱり早過ぎたな」って思う事業はすごくあるわけですね。あのタイミングが今だったらめちゃくちゃ良いのに、ということはあるので、タイミングも大事です。あとはチームですね。基本的にはサイエンティストのPh. Dがすごく好きで投資しています。すごいと思った技術や研究者の人生のテーマに、なるべく投資したい。

長南 チームとしては3人くらいは欲しいですか。

宮田 うん。最低2人のコファウンダーは必要だと思います。

長南 1人だったら投資しないということですか。

宮田 何人かは投資しています。やっぱりいるんですよ、ものすごいスーパースターが。

長南 ただ、それはきっとその人に優秀な人がついてくるからですよね。

宮田 そうですね。だから、なるべくバンド型に入れたいっていうのはあります。

起業のリスクはゼロです

長南 最後に、起業家へのメッセージをお願いします。

宮田 日本の起業家に足りないと思っているのは、多様性。研究者向けのファンドも最近出てきているんですけど、骨太の研究者とかゴールがノーベル賞みたいな人の起業、極端な話をすれば起業で成功した後にノーベル賞を取るみたいな、そういうキャリアがあっても良いと思うんですよ。ビジネスは儲けるためだけのものじゃないから、何らかの社会的な課題を解決したいと思っている人のツールとして起業を捉えてもらって、研究室とか研究所で研究費をもらうのと同じような感覚でVCからお金をもらう時代が来ても良いんじゃないかな、というのが今の日本を見ていて僕が思うことですね。

長南 日本も国単位で動き始めたという感じでしょうか。

宮田 そう。だから、昔だったら企業の研究所や理研に行く人たちに、是非起業してほしい。

長南 ゲノム編集とかも発展著しいですから、ものすごい企業が出てくると思うんですよ。未踏プロジェクトの人達も起業していますよね。Gunosyもそうですけど。

宮田 Gunosyみたいなの、すごく良いですよね。センスのあるスーパーマンと大人という感じで、形としてはすごく良いと思いますけどね。

長南 だから、そこで目利きが入ったんでしょうね。

宮田 あとは、僕らが起業をしていた頃に比べると、クラウドやオープンソースのおかげで費用がかからなくなって、ものすごく起業のハードルが下がっているわけですね。昔だと、サービスが盛り上がるとすぐに数億円かかって「サーバーどうしよう」って言っていたのが、今はもうほぼタダですよ。起業のリスク、ゼロ!(笑)だから、今の時代は起業は絶対にした方が良い。兼業禁止とかアホみたいなものだと思っていて、お医者さんも弁護士さんも起業した方が良いと思うし、マルチな仕事を持つ時代が来て良いと思いますよ。

長南 アメリカで大学を出た人の起業の比率はどのくらいなんですかね。ハーバードでアントレプレナーシップを受けた学生の内、卒業後10年間で起業している率が40%っていう話はありましたよね。

宮田 ものすごく高いですよね。この間は、スタンフォードのMBAの卒業生のほとんどが起業したという話を聞きました。だから、「起業のリスクはゼロです」というのを大きな声で言いたいですね。

長南 起業しないリスクはあるんですかね。

宮田 あると思います。あと、若い内の方がリスクは少ない。起業は落ち着いてきて30〜40代で、ってよく言いますけど、僕は10代で起業した方が良いと思っています。今、僕の息子が10歳ですけど、興味を持ち始めたら「会社作れ」って言おうと思っています。10代で起業しているのは素晴らしいと思います。失敗したって良いんだし、大学生でやるのはノーリスクですよ。だから、本当に高校生とかに起業家教育するのはめちゃくちゃ良いと思いますよ。

長南 アメリカでは、キャピタリストは格好良い職業ですか。

宮田 どうなんですかね。今ちょっと時代が変わりつつあって、大学生のキャピタリストが増えていますよね。どんどん低年齢化してきているから、格好良いか格好良くないかで言うと、格好良いんじゃないですかね。元々はおじさんんがEXITした後にやる感じでしたが、今は「NPOになります」と同じように「VCになります」というのが一つのキャリアパスとして出てきている感じがします。

投資家インタビュー Vol.8 スクラムベンチャーズ宮田拓弥氏 起業のリスクはゼロです

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《 CONCLUSION 》

たまたま居合わせた修学旅行の高校生に、サンフランシスコについて、アメリカにおける教育と起業について、熱く語った宮田氏。その姿に、高校生だけでなく引率の先生も圧倒されていた様子でした。
私自身が最もカルチャーショックを受けたのは、日本は高校生までみんな同じ制服で同じ考え方を学習する一方、アメリカでは小学1年生でそれぞれが尊敬する偉人になりきり、定期的にプレゼンテーションをすること。日本人には英語のハードルが最も高いですが、小学生の頃から人前で「俺はこれだけすごいんだ!」とプレゼンテーションを行うことで、大人になってから歩む道も自ずと違ってくるという話には、なるほどと思わされました。「日本人のエンジニアは素晴らしい!絶対世界で活躍できる!」と仰っていたことも印象に残っています。
日本とアメリカの架け橋となられているTakさんから刺激を受けるため、サンフランシスコに行くのも良いかと思います。

本インタビューにご興味を持たれ、宮田拓弥氏とのコンタクトをご希望の方は、下記からお問い合わせください。

投資家インタビュー Vol.8 スクラムベンチャーズ宮田拓弥氏

宮田 拓弥TAK MIYATA

スクラムベンチャーズ 創業者兼ゼネラルパートナー

早稲田大学大学院理工学研究科修了。エンジニア、インターネットビジネスコンルタントを経て、2002年米国南カリフォルニア大学発のベンチャー企業、NevenVision, Inc.日本法人に入社(2005年 代表取締役社長就任)。画像認識技術を活用した各種アプリケーションの開発を指揮。ボーダフォン、NTTドコモなどの携帯電話向け次世代機能として技術提供を行う。2006年8月、米Google Inc.による同社本社の買収を期に、代表取締役社長退任。2005年10月、ジェイマジック株式会社を設立、代表取締役に就任。" We Create Magic! "をキーワードに人々のライフスタイルにインパクトを与えるようなサービスの企画・開発を行う。

*本記事の内容は2015年11月取材時点のものに基づきます。所属、価格、企業名など時期により異なることがありますので、予めご了承ください。

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