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INTERVIEWS WITH INVESTORS

(2015/11 取材)

投資家インタビュー Vol.8後編 スクラムベンチャーズ宮田拓弥氏 投資家インタビュー Vol.8後編 スクラムベンチャーズ宮田拓弥氏

I am Thomas Edison. I am great.

長南 日本にもタニマチという文化があったり、村のみんなで優秀な人にお金を集めて学校に通わせてあげて、その人は戻ってきたら村の発展に協力したり、人に投資する感覚はあって、こういうものは文化は関係なく人間が本来持っているものだと思うんですよ。でも、日本だと「事業モデルに投資しなさい」と言われるんですが、宮田さんはとサンフランシスコでお話させていただいたときに「投資は完全に人だ」ということを仰っていたと思いまして。

宮田 P2Pレンディングって、日本では全く流行らないですよね。アメリカではP2Pレンディングとかソーシャルファイナンスがすごく大きくなっています。だから、人に投資するって感覚があるんです。僕、久しぶりにさっき日本の女子高生を見てものすごく違和感を感じたのが、全員同じ格好をしていることなんですよね。僕も日本の高校に通って制服を着ていたんですけど、自分の子供がアメリカの学校に通っていて、皆服装がバラバラなのを見ていますから、制服から変えた方が良いなって思いましたよ。完全に日本は一緒になる教育をされていて、目立たない方が良いという風になっていますよね。

長南 日本とアメリカでは教育方法も相当違いますよね。

宮田 うん。あのね、教育の話はものすごく違って、むちゃくちゃショックを受けました。「違う」というレベルではないです。僕の長男が小学1年生の時にアメリカに行ったのですが、その時の学校での課題が衝撃的でした。まず興味がある偉人を、クラスの中で被らないように選びます。うちの子は発明家になりたいのでトーマス・エジソンを選んだのですが、何をするかと言うと、その人になりきって、一人称でその人に関してプレゼンするんです。壁ポスターを作ってエジソンの格好になって、なぜトーマス・エジソンが素晴らしいか、なぜ世の中にとって偉大でどんな歴史を作ったのかを "I am Thomas Edison. I am great, because..." ってプレゼンするわけですよ。で、これは2つのポイントですごくて、これを1年生からやっているなら勝てないな、と思った理由でもあるんですけど、一つはユニークであることを徹底的に教えられていること。もう一つはプレゼンするということ。まず全員違う人になりきるんです。日本だったら「宮沢賢治について勉強しましょう」「はい、君どう思う?」「君どう思う?」って、意見は違うかもしれないけど、同じ人を勉強するんですよ。でもアメリカでは、そもそもテーマが被っていないので誰にも聞けない。それを小学1年生の時から前に出て、偉人になりきって皆に向かってプレゼンをする。うちの子も最初半泣きでしたけどね、慣れてくるんです。ずっとそれの繰り返しだからめちゃくちゃ上手くなってくる。日本では先生対生徒で、「はい、宮田くん」って言う先生に対して答えて、前に出てきて皆の前に向かって言うっていうのは中々ないですよね。

投資家インタビュー Vol.8 スクラムベンチャーズ宮田拓弥氏 I am Thomas Edison.  I am great.

長南 確かに。それに、"I am" って発表するということに関しても違いますよね。日本人って自分の成果を自分で「これはすごいでしょ」って言いづらくて、人から紹介してもらうんですよね。

宮田 "I am great." っていう言葉が日本人からは絶対に出てこない。「俺ってすごいんですよ、なぜならね」と言えない。だから、やっぱり教育はでかいと思うなぁ。僕も日本の教育で育ったから衝撃でしたね。僕も研究者とかPh.Dの人に投資することが多いんですけど、やっぱりめちゃくちゃプレゼンが上手い。日本の大学の先生とかPh.Dの人は、そんなに話が上手くないじゃないですか。

長南 日本の社会の中でそういうプレゼンすると、「あいつは嘘くさい奴だ」「大口を叩いている」って評判が出ると思いますが、アメリカではどうなんですかね。

宮田 だって、そうやらなきゃ生きていけないんだもん。本当の底辺が存在しているわけですよ。上下関係みたいなのが明確に存在していて、winnerは本当にwinnerになるんですよね。日本のプロ野球選手は年俸5億円で、10億円まで行く人は中々いないですよね。でも、アメリカとかヨーロッパは20億円みたいな人もいるじゃないですか。順位を綺麗に作るっていうのは、この幅をつけられる良さがありますよね。だから日本の、運動会で順位をつけないとか、通信簿で数字をつけないで「頑張りました」というのとは全然違います。

長南 一緒に手を繋いでゴールとか微笑ましいですけどね(笑)

宮田 格差社会というのは人類ひいては動物界の原理で、動物だと、そもそも生きるか死ぬかですよね。そういう意味で言うと、守られているとか死ねない社会っていうのは、ある意味本質的に限界に来ているとも思います。

長南 そこにひずみもあるっていうこともありますよね。それはどっちもどっちですよね。

宮田 もちろん、シリコンバレーが超最高ということではないんですよ。シリコンバレーはシリコンバレーですごくひずみがあるし、ものすごく問題を抱えているわけですよ。イノベーションが起きた時は、当然その裏で良いと思う人と大変な人がいるので、人類70億人イノベーションで超ハッピーとはならないですよね。中々難しいんですけど。

長南 実際アメリカに行くと、自分のことを誰も知らないので、「もっと真剣に頑張ろう」と思いますよね。自分の甘さを感じてしまいます。どこかで身の危険を感じたんでしょうね、本能的に。

宮田 アメリカでお会いした時の長南さんは生き生きしていましたね(笑)それも結構モチベーションになるんですよね。東京って小さいから、なんとなく住み心地の良いコミュニティーですよね。業界を全部仕切っているような人がいて、それはそれですごく素晴らしいけど、予定調和で小さくなっていますよね。

長南 キャピタリストってシリコンバレーには何人くらいいるんですか。

宮田 確かアクティブなファンドが2,500とか3,000だから、各ファンドに5人程度だとすると、1万人くらいでしょうか。

長南 日本だと1,000人はいないでしょうね。大体、日本ってアメリカの何十分の1くらいですからね。

宮田 ファンドの規模は日本が1,000億円でしたっけ。アメリカは4兆円ですから、規模としては1/40。日本の人口比、GDPはアメリカの半分だから、本当は1/2か1/3くらい。少なくとも1兆円は欲しいんですけどね。

長南 例えば、過去10年間で投資して大きくなった日本のベンチャー企業が、どれだけ外のGNPを持ってきているかっていうのをアメリカとを比べたら、全然違うでしょうね。

宮田 それはすごくファンダメンタルな問題ですね。トヨタやソニーの時代はハードに価値があったから、日本語で話していても良かったんですよ。でも、これからはソフトに価値があるから、本当の意味で外貨を取っていきたいなら、日本の公用語を英語にしないといけないと僕はすごく真剣に思っています。

長南 もしくはテクノロジーが進んで、日本語が英語に翻訳される技術が話す上でストレスがなくなるレベルまで高まるのと、どっちが早いかですよね。ただ、自分の言葉で話せた方が楽しいでしょうね。

投資家インタビュー Vol.8 スクラムベンチャーズ宮田拓弥氏

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