(2015/12 取材)
長南 Incubate Campは早くからすごく良い取り組みをされていて、さすが和田さんや佐々木さん(佐々木浩史氏、プライマルキャピタル 代表パートナー)だな、と個人的にも思います。前回は2015年7月の開催だったと思いますが、これからも継続して続けていかれるのでしょうか。
和田 そうですね。2016年もやりたいとは思っています。やる度に「ここはこうした方が良さそうだ」という部分が出てくるので、多少形を変えられれば。
長南 大枠について言えば、本当のシードやスタートアップ段階の起業家の方だけでなく、もう少し後ろの起業家についても対象としていて、最初の頃とは若干対象者を変えられていますよね。
和田 そうですね。元々2010年に始めた頃は300万円のシード投資をするためのプログラムでしたが、少し前にその投資条件を撤廃しました。現在の募集対象はシードからシリーズAくらいまで広がっていますが、起業家と投資家が深く話せる場として続けたことで良い場になってきた感覚があります。ちょうど調達を考えていたタイミングだから、と言って参加してくれる有望な起業家が増えているんですね。協力してくれる投資家の方々、参加してくれる起業家の皆さんのおかげではありますが。
長南 誰が最初にやろうと声をかけたんですか。
和田 僕がやりたいと言って始めました。
長南 ベンチャーとかVCとか、まだ皆が考えていない時期ですよね。
和田 そうですね。2010年にインキュベイトファンドができた直後で、会場もボロボロの温泉旅館でした。Y Combinatorのモデルはもちろん知っていましたが、単純に何社もバッチでくくって投資するのは僕ららしくないと思って。日本の環境に合った形でインキュベイトファンドらしいものを、という出発点から始まりました。
長南 500 Startupsもそうですけれど、普通は参加者を自分の投資先だけにするじゃないですか。Incubate CampはVC業界の中でも他社で活躍している方たちを呼ばれていますよね。業界全体を盛り上げようという発想からだったのでしょうか。
和田 起業家にとっては、誰と出会えるかで運命が変わりますよね。インキュベイトファンドの中でも4人のパートナーの誰と会うかで反応が違ったりするので、起業家にとって一番良い出会いになるように最大化できれば、と思って。最高のラインナップが一通りあれば、それが業界にとっても良い影響を与えるだろう、という発想です。参加しているゲストのキャピタリストの方々の実績や個性にバラエティーがあるので、そこに合わせる形で参加起業家のステージも広めに取っています。
長南 インキュベイトファンドとしてはもう投資を検討しないであろうステージの会社もありますか。
和田 どちらもありますね。自分たちの投資先との出会いは、必ずしもIncubate Campだけではなく、普段の活動から自分たちで見つけますし、それで良いかな、と思っています。
長南 こういう起業家はこの人と相性が良さそう、と4人の中で色分けされていますか。
和田 好みも多少ありますし、投資したい起業家像は各自の中にいくつかあるので、重なっているところも違うところもあると思います。ただ、経営者に求めている資質の優先順位は基本的に4人とも近いと思います。
長南 人間関係と言うと少し踏み込みすぎですが、4人はどういうバランスで成り立っているのでしょうか。
和田 基本的には、各自が挑戦したいことは極力応援するというか、お互い邪魔しないようにするカルチャーです。Incubate Campも僕がやりたくてやらせてもらったっていう感覚です(笑)年齢の違いはあれど、イコールパートナーシップということで、良くも悪くもかなりフラットにやれていると思いますね。
長南 今まであまりお聞きしたことがありませんが、4人は誰が中心となって集まられたんでしょうか。
和田 明確に誰というわけではなく、自然発生的に集まった感じですね。それぞれ個人でファンドをやっていた頃から深く連携していたので、投資哲学やコミットメントに関する信頼関係と上手くいくイメージは既にありました。
長南 良いですね、その信頼関係。逆に言うと、四等分して納得できない人とは組むべきでないんでしょうね。
和田 1人でやりたければ、わざわざ集まる必要もないですしね。4人でやっている今の方が、1人で全部やっていた時代よりも楽しいです。お互い刺激し合って成長できて、やれることも拡がりました。