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INTERVIEWS WITH INVESTORS

(2015/12 取材)

投資家インタビュー Vol.11後編 インキュベイトファンド和田圭祐氏 投資家インタビュー Vol.11後編 インキュベイトファンド和田圭祐氏

心底「やりたい」と思える挑戦は、とことんやってもらう

長南 今までの投資で一番良かったところはどこですか。リターン以外にも、社会的な意義として良かったな、みたいなところがあれば。

和田 特にここが一番良いっていうのはないかもしれません。どれも良かったところはありますし、まだ結果が出ていなくても、良かったと思えるように持っていくだけなので。どこに一番注力しているかもよく聞かれますが、どの会社も魅力的なので、すごく答えるのが難しいです。会社や経営者のフェーズによって変えている部分もありますし、どの投資先も山あり谷ありなので、一喜一憂せず、調子の良いところに過度に肩入れすることがないようにしています。

長南 なるべく偏りが生じないように、バランスを取って平均的に、満遍なく関わりながらやっていく感じですか。

和田 挑戦している限り、色々な困難や課題が次々と待っているので、その瞬間、その瞬間で経営陣にとっての最重要課題の解決を支援している感じです。いつも何かしらの勝負どころを抱えている感じです。

長南 投資してだめになるところも確率論では出てくると思うのですが、その時はどういう対応をされますか。

和田 どういう風にだめになるかにもよりますが、経営者の心が折れてしまっている場合はいかんともしがたいですね。逆に折れていないのであれば、本人が諦めない限り、場合によっては事業や組織を柔軟に変えながら、僕も諦めずにチャンスを狙っていきます。

長南 アメリカのVCは良いところに集中して、だめなところには力をかけない、と聞いたことがあります。そういうことは日本だと少ない、もしくは和田さんはそういうわけではないのでしょうか。

和田 そういう考え方自体は一般的かもしれませんが、良いところほど力をかけなくても上手くいくことがありますし、好調なところで良かれと思ってやったことが結果として邪魔になってしまうということがないように、僕の場合は気をつけています。

長南 アメリカは想定したビジネスでだめだったら、ピポッドせずにBUYOUTして違う事業でやり直そうとすることが多いですよね。対して日本は、試練に耐え続けて結局ピボットして、創業時と上場時のモデルが違うものになっていることも多い気がします。起業家もVCも、会社を子供のように思っているというか。日本人のモノを大事にするアイデンティティ、個人的には私もそのタイプなのですが、その辺りはどのようにお考えですか。

和田 形を変えること自体が悪いとは思いませんが、変える前提で投資しているわけでもないですね。起業家が心底「やりたい」と思える挑戦をとことんやってもらって、形を変える必要性を皆が感じれば、そこで思いっきり舵を切ります。

投資家インタビュー Vol.11 インキュベイトファンド和田圭祐氏 心底「やりたい」と思える挑戦はを、とことんやってもらう

起業家は、ビジョンについて頑固で良い

長南 起業家に対して、粘り強さという要素をどのくらい評価しますか。アメリカではあまり評価されていない気もしますが、日本の場合は、最後の最後まで粘っていると周りの人が協力してくれたりしますよね。日本民族の特性かもしれませんけれど。

和田 ビジョンが正しいのであればっていう前提条件はありますが、基本的には粘り強さはとても大事だと思います。ゴールやエグゼキューションにはものすごくこだわる、みたいな。ただ、目標に対する執念深さは必要ですが、戦略や組織の在り方の方法論については、状況に応じてその都度柔軟に変えていくべきですよね。

長南 そうすると、ベンチャーキャピタリストの中で相対的に見た場合、和田さんは粘り強さに対する評価のウェイトが大きい方ですか。

和田 起業家の心が折れていない限り支え続けるという意味では、僕も彼らと同じくらい粘り強く、我慢強くないといけないとは意識しています。一方で、やるべきことをやりきった上で正当な理由の元であれば、プランの変更に対する免疫というか、許容度はあるかもしれません。

長南 何割くらいが投資した後にピボットしているイメージでしょうか。

和田 過去に何社かありますが、感覚としては少ないです。起業家の中には、事業をやっていきながら見える景色が変わったら、僕らも意識しないくらいすごく自然にモデルを変えるパターンもあります。こういった場合、僕自身もピボットしたことを忘れているだけかもしれません。ほとんど一つのビジョンを貫徹する感じですね。

長南 ベンチャーキャピタリストとしてのキャリア全体で関わった投資は何社ですか。

和田 30〜35社です。

長南 その中で何件がEXITして、どのようなリターンを出していますか。

和田 サイバーエージェント時代はそもそも社数が少なかったですが、1/3とか1/2とか。ほぼ引き分けに近いプラスもありますが、独立してからは半分くらいですかね。リターンはホームランに依存します。

長南 もう完全にクローズになった会社もあるのでしょうか。

和田 あります。シード投資において、全勝を追い求めるのは中々難しいですね。百発百中っていうわけにはいかないです。

長南 インキュベイトファンドの投資方針として、ポートフォリオにマトリックスを作って事業領域を分散されますか。それとも、ある程度まで気になる事業領域のところに重点的にバッと振っていきますか。シードで入れようとすると、ポートフォリオを組んでもバラバラになってしまいますよね。

和田 綺麗に穴埋めをしている感覚は4人ともないと思いますが、やる以上はリードポジションを取って週1で経営会議にコミットするという発想なので、完全にバラバラにやっているわけでもないですね。

長南 一人が担当する社数はどれくらいが限界と考えますか。

和田 20社くらいいけるんじゃないですかね。多少の濃淡をつけるなど、工夫がもちろん必要で、限界に近いとは思いますが。

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