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INTERVIEWS WITH INVESTORS

(2015/12 取材)

大きくなると自分が信じた会社に、積極的についていく

長南 現在パートナーをやられているインキュベイトファンドは、3号ファンドが110億円集めていて、個人でやられていた頃と比べて規模が大きくなり、1件あたりの投資額も増えてきていると思うのですが、時間の濃さや対応の仕方など、起業家との付き合い方に変化はありますか。

和田 あまり変わっていないかもしれません。起業家へのコミュニケーションを疎かにせず、深く付き合っていこう、というスタンスは不変なので、原則として、特に立ち上げ期は週1回のミーティングなど、高い頻度でコミュニケーションするようにしています。Incubate Campという、シードに少額の投資をするプログラムを通して支援する場合には、起業家の事情に合わせて柔軟に対応することもあります。

長南 Incubate Campは私も何度か参加させていただきましたが、すごく良いプログラムですよね。内容は、事業の成長を支援することがメインですか。

和田 もちろんそうですが、僕より起業家本人たちの方が事業に関しては考えているはずなので、そこで壁打ちのような使い方をしてもらっているイメージです。

長南 インキュベイトファンドのパートナーは4人いらっしゃいますよね。それぞれ役割分担があるのか、それとも個別に活動しながら最後に集結するのか、どのような感じで意見形成されていらっしゃるのでしょうか。

和田 ベンチャーキャピタリストとしての投資支援活動は、それぞれのパートナーが独立して自律的にやっていますね(笑)もちろん普段から密に情報共有をしながら意見を言い合う関係がベースにありますが、それぞれ独自の判断で投資先の発掘からEXITまでやっています。ただ、投資業務以外のノンコアには役割があります。

長南 他のVCだと投資委員会があって、一人でも反対したら投資をしないとか、多数決で決めるなどの方法が見られますが、そこはどういう風に決めていますか。

和田 投資委員会はやっています。決定のルールとしては、投資条件のガイドラインによって満場一致が必要な基準もあれば、起案者の担当パートナー以外に一票の賛成があればGOできる基準もあり、両方あります。

長南 自分はこれがやりたいんだ、という想いがある程度通る仕組みなんですね。

和田 そうですね。極端な暴走が起こらないようにガバナンスの仕組みを考えつつ、やはりシードなので、パートナー個人の直感と覚悟に基づいた判断を最大限に尊重するパートナーシップだと思います。

投資家インタビュー Vol.11 インキュベイトファンド和田圭祐氏 大きくなると自分が信じた会社に、積極的についていく

長南 投資先のステージは気にされますか。シードに特化したファンドで110億円を投資しきるのは大変だと思うのですが、ここぞという会社に投資を重ねた結果としてミドル・レイターに近寄るのか、あくまでもステージはシードに限定して広く投資するのか。

和田 基本は "First Round, Lead Position" を投資哲学として掲げており、原則としています。初回投資後の4人の追加投資判断に若干個人差がありますが、僕は極力フォローオンに応じていきたいと思っています。社数を増やすというより、大きくなると自分が信じた会社にシードから支援して、積極的についていく感じですね。

長南 起業の段階から成長ステージまでずっとついていくところまでついていく、と。アメリカみたいですね。

和田 そうですね。米国のVCの歴史はやはり長く、学ぶ点がつきないですね。

社会的な必然性、経済的な合理性のある「夢」

長南 起業家との関係性は色々なパターンがあると思いますが、どのような形が多いですか。共同経営的なのか、キャピタリストはやはり外部なのか。自分よりも起業家の方が事業について勉強していてほしいから、後ろからついていくだけなのか、背中を押してあげるのか。

和田 大事なのは、目指すゴールが小さくならないように、「大きなゴールに向かっていこう」とお互いに共有していることだと思います。具体的に何をするかは個別の方法論になりますが、最終的な目線が下がったり、易きに流れたりしないように決断の背中を押してあげる感じですね。

長南 アドバイザーよりもう少しコミットメントが強い感じがしつつも、俯瞰するんですね。

和田 もちろん経営チームの一員である以上意見は述べますが、最終的に経営者の決断と実行が全てだと思っています。

長南 投資する際は相手のどこを見ますか。シードだと、まだプロダクトやサービスがなかったり、人が集まっていなかったりするケースもあると思うのですが。

和田 目指すゴールに共感できるかどうかが大きいですね。

長南 起業家がある程度大きな夢を語っていて、「それはそうだね」と感じるものがあれば、投資もGOできる、ということですか。

和田 それだけでGOというのはさすがにできませんが、その夢を戦略やビジネスモデルに落とし込んだ時に社会的な必然性が高くて、経済的な合理性もあると良いですよね。その二つが感じられれば、細かい方法論はやりながら一緒に試行錯誤していくしかないっていう感覚です。

長南 ミドル以降のVCだと、プロダクトがそこそこできていて、経営チームが魅力的なところには投資するけれど、個人一人には投資しにくいという意見もありますよね。エンジェル投資家は逆に個人を見ていて、プロダクトがなくても良いと言う人も中にはいるんです。どちらかと言うと、和田さんはエンジェル投資家に近いVCという感じでしょうか。

和田 チームはできているに越したことはありませんが、ファウンダー一人だけを見ることもあります。ただ、最近は「この事業には必要な要素が複数あり、そういったバックグラウンドを備えたチームでないとだめだ」というモデルの事業もあって、その場合は、必要なスキルセットや遺伝子を揃えるようなチームビルディングを一緒にやることもあります。

投資家インタビュー Vol.11 インキュベイトファンド和田圭祐氏

和田 圭祐KEISUKE WADA

インキュベイトファンド 共同創業者兼ゼネラルパートナー

1981年生まれ。2004年株式会社フューチャーベンチャーキャピタル入社。ベンチャー投資、M&A アドバイザリー業務、二人組合の組成管理業務に従事。 2006年株式会社サイバーエージェント入社。グループ初の海外投資ファンドとなるCA JAIC CHINA Internet Fund(22.8百万US$)の組成管理業務に従事、国内インターネット関連企業の投資育成業務を行う。 2007年シードステージ投資に特化したVC ファンド、セレネベンチャーパートナーズ設立、代表パートナー就任。ポケラボの設立等を含めたスタートアップのインキュベーション活動に従事。 2010年インキュベイトファンド設立、代表パートナー就任。Incubate Camp などのシード投資プログラム業務を主幹。
主なExit 実績は、Sunfun Info Co., Ltd(台湾市場IPO)、株式会社ポケラボ(M&A)、株式会社イストピカ(M&A)等。

投資家インタビュー Vol.11 インキュベイトファンド和田圭祐氏

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