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INTERVIEWS WITH INVESTORS

(2015/11 取材)

個人ファンドと組織ファンドの規模感のレベルが揃ってきた

長南 20年間VCにいらっしゃる中で、ベンチャー業界の変遷をどう感じられるか、全体感をお聞きしたいです。

中垣 間違いなく優秀な人が増えました。業種もコンシューマー・インターネットが中心と言いつつ多様化してきていますし、日本でもそこが分厚くなってきた感じはします。あとは、ファンドの募集に複数回成功していて、人生をコミットしてしまっている人が確実に増えたので、全然違いますよね。僕らも含めて独立して個人でやっているファンドと、組織で集めているファンドの規模感に差がなくなってきました。昔は組織型でやっているVCが50億〜500億円、個人で独立したVCだと10億〜20億円規模のファンドだったのが、今では規模が変わらなくなってきたので、同じステージの会社に対して投資できるようになってきています。分かりやすくコミットが明確なVCファンドが増えましたね。

長南 なるほど。確かに最近、国からの資金も拠出されて、すごく大きなファンドが金融機関以外で設立されていますよね。

投資家インタビュー Vol.9 DRAPER NEXUS VENTURES中垣徹二郎氏 個人ファンドと組織ファンドの規模感のレベルが揃ってきた

中垣 ただ、もう少し大きな流れだと、良い会社は沢山生まれていても、内需型のビジネスばかりなんですね。残念ながら日本の人口は減り続けていて、構造的に非常に恐い状態にあると思います。現状ではその解決策となるベンチャー業界がないので、そこは何か変わっていかないと。極端な例で言うと、世界の中で日本経済が相対的に下がっていって、次なる産業の牽引役となるべきスタートアップがその中でしか動いていないとなると、ますます日本の経済の閉塞感が強まって世界との差が拡がる可能性は高いですよね。

長南 大企業から一部パイを奪うようなリプレース型も一企業としては良いと思いますが、中垣さんのように日本経済全体として捉えた場合には良いとは言い難いですよね。

中垣 そこは中々しんどいと感じています。

長南 今、LPは日本ですか。

中垣 日本の大企業がほとんどで、外国はほぼいないです。個人が少し入っているくらいですね。

長南 目標リターンはどのくらいで置かれていますか。最低200%だと思うのですが、500%くらいでしょうか。

中垣 機関投資家と話をしていると、ファンドのマルチプル(投資倍率)は10年で4倍求められます。実際どうかは別として、ポートフォリオとして。上にも下にもブレながら、現実的なところで3倍をどう確保するかは意識していますね。日本のVCファンドは一般的に2倍で合格と思われている感じはあります。今は事業会社を中心にそれなりの規模を集められているし、これは事業会社にお金がある証拠ではありますが、事業会社がVCファンドにお金を出すのは運用のためではないですよね。オープンイノベーションが国や会社の命題で、時代の後押しを受けて政策的にファンドに出資していただいているところもあるんです。この状況が次のファンドを作る数年後にもあるとは思えなくて。

長南 アメリカの場合はどうでしょうか。

中垣 アメリカのトップVCには凄まじいマルチプルを出しているファンドが沢山あります。200億〜300億円のファンドで25倍とか、もうね、桁が違い過ぎちゃって(笑)真似する気にも中々なれない。アメリカのベンチャー投資額は年間3兆円、エンジェルを入れたら5兆〜6兆円と言われているのに対して、日本は1,000億〜2,000億円です。このギャップを多少なりとも埋めようと思ったら、やっぱりファンドがないと始まらないですよね。数百億円規模のファンドが安定的に数十あって、機関投資家からちゃんとお金を引っ張れるようなファンドにならないと厳しいです。そのためにも、運用でも成果を出し続けないといけない。

長南 現在の投資先は日本の会社だけですか。

中垣 日米の両方です。北米は、インダストリアル・テックとエンタープライズ・ソフトウェアと日本とを三等分にしていて、日本はエンタープライズ・ソフトウェアを中心としながら、他の領域も排除しないという感じです。

スタートアップの成功確率は、株価よりも調達額で決まる

長南 日本とアメリカの違いとして、他にも何かありますか。

中垣 日本のシード投資家の知り合いに言ったら怒られそうですけど(笑)日本はシードラウンドの投資家の発言力がとても強いかな、と。どんなステージにも一定の株価水準はあって、売上など、会社の状況と連動させなければならないと僕は思うので、そこはシード投資家の考え方と多少ぶつかる時はあります。もちろんシードラウンドで金額を出すのはリスクが高く、それを越えて会社が成長してきていることは素晴らしいので、後のラウンドで入る投資家はそのことを配慮しなければならないのですが、とにかく株価を高くするのが良いと言われてしまうと、お金以上の価値は何もないようでそれもまた複雑。企業価値をしっかりと上げてリターンを貰うと考えるのか、とにかく株価を上げてそのギャップからリターンを取るのかっていうのは、似て非なるものではないかな、と。

長南 そこはもう考え方が違うということですかね。

中垣 そうかもしれません。アメリカだと、シード投資家はシリーズA以降にあまり口を出さないんですけどね。日本は相対的にシードラウンドの投資家の方が事業経験、投資経験の豊富な方が多く、結果、発言権が強くなるということがあるからかもしれません。シリーズA以降のVCがもっとレベルを上げていかなければならないのでしょうね。

長南 日本はシリーズ間のコンフリクトが強いんですかね。

中垣 それも言えます。今後、シリーズA,B,CはAの投資家がプロラタで継続的に投資をし続け、Bの投資家もCに出す、という風になっていくとコンフリクトが減っていくかと思いますが、まだまだ少ないです。

長南 シリーズごとに投資家が全部分かれているのは、役割が変わっているからなのでしょうか。アメリカは大体追いついてきますよね。

中垣 アメリカのVCを傍から見たり、向こうのメンバーと話したりしていても、資本政策や資金調達を考えて優先株の設計も捏ねくり回して、最終的にはいかにして1円でも多く調達できるかっていうことを目指しているようにしか思えないんですよ。やっぱりスタートアップはお金があればあるほど、成功確率が上がるので。

長南 挑戦度合いや挑戦できる回数も変わりますしね。

中垣 起業家も投資家も、皆がその為に動いているので、さっき言ったコンフリクトは起こりにくくなります。次のラウンドにどれだけ高くつけるかという話に終始すると、調達額よりも株価となった時点で「これって本当に会社の成功を目指しているの?」となるじゃないですか。いくら高くつけても、M&Aがその中で上手くいくかは分からないですからね。それよりは調達額を1円でも多くして、ビジネスをスケールさせることの方が本来重要ですよね。成功確率を上げる最大のポイントはそこを目指すことだと、落ち着いている気がします。

投資家インタビュー Vol.9 DRAPER NEXUS VENTURES中垣徹二郎氏

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