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INTERVIEWS WITH INVESTORS

(2015/10 取材)

将来リスクマネーをVCに引っ張ってくるために

長南 最近日本の超富裕層が海外に移り日本にお金を落とさないような動きもありますけど、それについてどのように考えていますか。個人としての経済的行為としては正しいという見方もあります。

河野 一方で、国そのものにお金を落とすことで国が個人に対して報いているかっていうと、そうとは限らないじゃないですか。逆に成功した起業家が、若い起業家に投資をするっていう活動を通じた方が、納税とは別の形で有効的なお金の使い方になり得るって考えたら、それはそれで国力の発展の形態の一つになるのでは、って思います。

長南 海外からでも投資をして起業家を日本で育ててくれれば良いんじゃないかっていう感じですか。

河野 そうですね。

長南 ただ、海外に行った人の多くが投資対象は海外なんですよね。生活がUSドルに連動しているからやUSドルに換えてしまっているからということだとは思うんですけど。

河野 それは機関投資家が日本のVCファンドに投資をしないっていうのと一緒で、結局、金融商品としての魅力が薄いからなわけですよね。他の金融商品に投資して日本のVCに投資をしないなんて何事だ、と言っていても始まらないので、僕らがちゃんとリターンを出してアセットクラスとして機関投資家に受け入れられるような状態にしていかなければいけないと思っています。やっぱり機関投資家回りをしていて、すごくそれは思います。分かりやすいですよね。だって、リターンが高いところには投資をしてくれるわけですから。

長南 それは海外の投資家も回っているんですか。

投資家インタビュー Vol.5 伊藤忠テクノロジーベンチャーズ河野純一郎氏 将来リスクマネーをVCに引っ張ってくるために

河野 いや、僕らは海外の投資家までは手を伸ばせていないので、グローバルって意味での機関投資家の声までは拾えていないです。ただ、やっぱり日本の機関投資家のところに行くと、投資したいけれども、やっぱりグローバルで見た場合のパフォーマンスで見ると日本のVCファンドっていうのはちょっと選択肢に入らないって言われちゃうわけですよ。でも、結果的にそれはパフォーマンスを出せていない我々の所為だよね、と。

長南 彼らにもスチュワードシップみたいなものがありますからね。

河野 僕らだって、リターンが出そうになければ投資しないわけですよね。結局理屈は同じなので、だったら日本のVCの上流からもっとお金を、リスクマネーを引っ張ってくるには僕らがパフォーマンスを上げなければいけない、っていう考え方ですよね。

お金の色で会社の運命は大きく変わる

長南 お金に色ってあると思いますか。

河野 あると思いますよ。完全にVCなんてそうじゃないですか。だって、僕らだって投資先で例えば10億円集めるという時に、誰でもいいんだったら、お金に色がないんだったら、一番高い条件で出してくれるところが良いですよね。でも、必ずしもそうではないわけじゃないですか。

長南 そうやって選ぶ人もいますけどね。高いところで良いって。

河野 そうですね。それはどちらが正しいとかではなく、どちらを選びたいかっていうポイントが明確にあると思っていて。だって、そのお金を出す人であったり、そのお金に紐づいてついてくる人だったりによって、おそらくその会社の運命って大きく変わると思うんですよ。

ベクトルが外に向いた起業家が増えてきた

長南 ベタな質問をしますが、今後投資したい事業領域はどこになりますか。

河野 どこですかね。そういう意味では、あまりキーワードに落とし込めているところは今のところないんですよ。

長南 ないのか、そもそもあまりそういう見方をしていないのか。

河野 あんまりそういう見方をしていないっていうことですね。これから日本が人口減少時代に突入する中においては、抜本的には少子化の問題を解決するために出生率と婚姻率を上げなきゃいけない。ただそれってすぐさま解決できるわけじゃないから、まずは教育っていうところで人間の生産性を上げるっていうところをやりながら、業務に忙殺されている人間の生産活動を業務面でオートメーション化することによって振り向けるとか。そういうテーマはあるんですよ。でも、それが言語化できていない。だから、バクッと言えば、人間、日本人としての精神性の発展的継承とか、ITによる産業の高次化とか、そういうフワッとしたテーマはあるんですよね。

長南 で、それがはまった時には投資するってことなんですね。

河野 「俺もそれ思ってて、君はそういう解決方法でできるんだね!確かにそれはありだ!」っていう。

長南 それって偶然くるのか、必然で来るのか。 解決方法はやっぱり起業家が持ってきてくれる感じなんですかね。エキセントリックな起業家が出てきて「解決方法こうですよ」って言ったのがはまったら良い、と。

河野 結果それが多いですね、今のところ。だから、あまり決めないようにしていますね。領域が狭くなっちゃうし、結局、僕らですら想像できてしまうところで良いんだっけっていうのもあるじゃないですか。だって僕が自分で考えていたところにしか投資をしないとなったら、多分すごく狭くなると思うんですよ。

長南 河野さん、一時期というか今もというか、「ファッションの河野」みたいな感じになってるじゃないですか(笑)

河野 なってますかね。何なんですかね(笑)全然違うんですよ。伊藤忠っていうのもあるし、1番最初に投資したのがファッションコーディネートアプリっていうのもあるし、自分自身もファッションとか好きなんで。だから、もう無茶苦茶ですよ、僕のポートフォリオなんて。でも、全部辿っていくと源流は同じで、先ほど話した日本の国力の増強に資するみたいなものに近いんですよ。

長南 そう思うようになったきっけかはなにかあったんですか。

河野 特別なきっかけはないですね。そういう起業家が増えたからじゃないですか。要は、自分側にベクトルが向く以上に、社会の課題に自分が気づいてしまったが故に、それを横目に見つつ放置するのではなく、自分が主体的、能動的に解決するんだ、というベクトルが外に向いた起業家が増えてきたから、それにある意味感化されて、「俺もやっぱりその夢一緒に見たいわ」と。

投資家インタビュー Vol.5 伊藤忠テクノロジーベンチャーズ河野純一郎氏

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