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INTERVIEWS WITH INVESTORS

(2015/10 取材)

起業家は第六感で判断できる

長南 投資前後で起業家との付き合い方は変わりますか。

河野 変わりますよね。やっぱり投資前は食事に行ったり飲みに行ったりはしないですね。情が移るからやらないからと明確に決めているわけではないんですけど。

長南 起業家の性格を知りたいから食事をするという人も中にはいます。

河野 そういうことをしなくても分かるって思っているんですよね。

長南 その分かるポイントってどこなんですか。

河野 それはたぶん直感でしかなくて、第六感レベルで感じるようになっていますね。これまでに色々やってはきたんですよ。やっぱりミーティングっていうかしこまった場では用意したプレゼンテーションであったり想定した回答があったりであくまで交渉の構図になるから、本音ベースで語り合えないだろうっていうのはあったので、食事に行ってみたり、場合によってはお風呂に一緒に入るっていうのもやってみたり。風呂面談ですね(笑)色々やってみた結果、あんまり変わらないなと思ったわけですよ。

長南 直感というか、経験値に基づいているというか。

河野 直感で判断している時って、過去のものすごく熟考した上での判断の積み重ねが瞬間的な決断力にたぶんなっているんですよ。そういう意味で僕は事業をやったことがないっていうのがずっとコンプレックスではあったんですけれども、一方でずっとベンチャーキャピタリストとして起業家を見て判断し、認められたり認められなかったりっていうのをずっとやってきているので。

長南 だいたい何人ぐらい見てきたんでしょうか。

河野 年間とりあえず100人以上会っていて、それが13年間ぐらい。1500人いくかいかないかぐらいははやってきていますね。

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長南 その中で投資に至ったのは何件ぐらいですか。

河野 ジャフコのときに13社、でITVに来てから19社。

長南 32社。50分の1の確率だとまぁまぁ投資している方なんですかね。

河野 まぁまぁ投資している方なんじゃないですか。大体は100社に1社って言いますよね。

長南 会う前のタイミングでスクリーニングがかかっていたんですかね。

河野 最近どんどん精度が上がってきている感じですね。会う母数は減っています。50件ぐらいしか会っていないのに4件投資するみたいなことがここ1,2年は多いですよね。

長南 それってVC業界が狭くてリファーが取れるから予め評価が分かるとか、そういうのもあるんですかね。

河野 あります。あとは一緒にやるベンチャーキャピタリストさんが僕の個性、人間性、好きな分野かどうか、社長と合うか合わないかみたいなことを判断して紹介してくださるので。例えば直近に投資した案件は、ある投資先でご一緒しているエンジェル投資家の方が、「この会社絶対河野さんと合うと思うので、ちょっとステージ的には早いけれど絶対いけると思うし河野さんの得意領域とすごくフィットすると思うんですよ」って言って紹介いただいて。もうドンズバではまって、製品もまだできていなくて、まだ開発途上なんですけど、単独でダーンといったっていう。投資契約の最後の調印までその会社のオフィスには1回も行かなかったですね。最後に「1回ぐらい行かないと本当に会社があるか分からないから1回だけ行かせてください」って行ったんですけど、ミーティングも2回ぐらいしかやっていないですね。あとはオンライン上のチャットで。

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長南 確かに河野さんの個性は知れ渡っていますからね(笑)それはどこが評価ポイントだったんですか。経営者と会って判断したんですよね。

河野 そうですね。その彼が思っている事業構想、そこにおける革新性とモノを作る上で必要なエンジニアリングのチームを組成していたっていうこと。つまりその事業構想力と人を集める巻き込み力、あとはモノができたら確実に売れるっていう営業力が備わっていたので。過去投資していたからこそ分かってきた課題みたいなのがあって、ちょうどその課題に感じていた事業領域だったんですよ。はまったんです。まさにこれだよと。彼は会社辞めて独立する時に挨拶まわりする中で「こういうソリューションがあったら欲しいですか」、「使いたいですか」っていうのを全部挨拶周りしてアンケートをとっていたんですよ。

長南 アンケートって用意周到ですごいですね。

河野 だから勝手に自分で思いついただけでなく、それが事業機会にちゃんとなるかということをクライアントに全部確認していたんですね。で、いくらだったら買うかとか、どういう料金体系だったら買うかとかっていうのを全部とってきているんですよ。だから確信を持って事業を始めていて。だから「相当良いな」と思っていたんだけど、当時はとりあえず最初のファイナンスなので5,000〜8,000万円ぐらい調達したいという相談が来て。 「でもこれさ、5,000万円とかじゃ作れないよね。5,000万円で途中まで出来たとしてもまたファイナンスするのはたぶん無理だから、だったら徹底的に他社が追いつけないぐらいの良いモノを作ってお客さんに使ってもらえるプロダクトでリリースできるって考えたらいくら必要なの?」と聞いたら1.5億円だと言うので、じゃあ「1.5億円いこうよ」と(笑)あとエンジニアのチームを見ると、これだけのメンバーがいればできるなっていう感じがしたので。

長南 その経営者の思想とか人間性とか行動力、もちろんプロダクトに皆で行こうぜって乗っかっている感じなんですかね。

河野 そうです。超有力なエンジニアが集うわけですよ。僕は聞くわけです、「なぜこの会社なんだ」と。まぁいくつか理由はあったんですけど、ほぼできあがっているところに今から入るより、よく分からないけれどもチャレンジングな領域でこのカリスマ的な起業家と一緒にチャレンジしたいんだっていう野心的なエンジニアがいて。で、バックグラウンドとかもちゃんと見るんですけど、ほんとにこれだったらこういう要素とかできそうだなって。

長南 エンジニアのバックグラウンドはやっぱり見るんですね。

河野 見ます。その会社の場合は人とチームでしか判断できなかったので。全部エンジニアのレジュメを出してもらって、あとマネジメントインタビューの時は社長だけじゃなくてコアなエンジニアを2人連れて来てもらってミーティングしてっていうことをやって投資しました。

長南 それはどうやって案件を通したんですか。ITVの中で投資OKってなるのに難しそうな案件をどうやって通すかというところをお聞きしたいです。

河野 それはもうものすごい膨大なデータと、それを第三者に見せた時にこれは有望だねっていう資料をちゃんと作って、ロジック立てた説明でやっていく。最後は想いですよね。あなたたちはノーかもしれないけれども、俺には見えている未来があるからやらせて欲しい。で、僕は確信があって、会わせれば絶対俺の言っていることが分かってくれるだろうなというタイプの起業家だったので、実際会ってもらったらやっぱりすごく良いねってなって。VCってだいたい僕らぐらいのファンドサイズになると、パートナーの合議制によって決まるわけですよね。ただ今の時間軸において皆賛成になる案件ってその時点が旬な可能性があって、逆に革新的なものっていうのは今っていう時間軸において判断が出来ない可能性があるので、本当にすごい会社っていうのは意見が割れるはずなんですよ。でも合議制で決めちゃうと決まらない可能性があって、本当の意味でのダイヤの原石を取り逃す可能性がある。僕がやりたいと言っても他の二名のパートナーから反対が出たらダメだったわけですが、ちゃんと理解してくれました。

長南 そういうのって珍しいですよね。

河野 だから僕結構、拍子抜けしたっていうか。

長南 河野さんがノリにノっていて、「河野がやるからしょうがないか」とかそういうのではないんですよね。

河野 ないですね。冷静です。そういうのはうちの会社はたぶんないと思いますよ。

投資家インタビュー Vol.5 伊藤忠テクノロジーベンチャーズ河野純一郎氏

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