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INTERVIEWS WITH INVESTORS

(2015/9 取材)

エッジの効いている経営者とオールラウンダーな経営者

長南 投資決定は人をまず見る。では人のどこを見るか、というのは以前鈴木さんに伺った記憶があって、「時間を守る・あいさつができる・可愛げ」の3つですか。他にはありますか。

鈴木 究極はそういうところでしかないんですよね。ちゃんとコミュニケーションをとれるかとか。

長南 だけどコミュニケーションが取れない経営者ってたまにいて、その人がすごく研ぎ澄まされているケースってあるじゃないですか。その場合は誰かがフォローすれば良いですかね。

鈴木 そう。たとえばチームがあるとして、そのすごいエッジの効いている経営者が投資家候補との面談の時に、彼の良い部分が響けば良いけど、だめな部分も出るかもしれないというのはチームだったら分かるはずなんですよ。だったら二人で対応すればよい話ですよね。そういうエキセントリックな人が事業の夢を語り、投資家のための資料を出すみたいな全然不得意なこともやろうとするとコミュニケーションとして破綻するんですよね。

長南 このちょっと変わった経営者か、オールラウンド的になんでもそつなくこなすタイプのどちらかっていったら、市場などは全く同じ条件とした場合、どちらを選びますか。

鈴木 難しいですね。投資するべきはたぶん変わった人の方なんでしょうね。世の中の企業って3つしかなくて、良い企業かダメな企業かどちらか分からない企業なんですよ。分からない企業に僕らとしては投資しないといけないんですよね。究極は。

長南 良い会社に投資する、というわけではない。

鈴木 皆が良い会社だって思うということは良い会社なのでしょうけど、限界が見えますよね。

長南 成長性の限界が見えると。

鈴木 そうそう。だからそこそこしかいかない可能性が高いと思うんですよ。

長南 安定成長ですね。

投資家インタビュー Vol.1 リード・キャピタル・マネージメント鈴木智也氏 エッジの効いている経営者とオールラウンダーな経営者

鈴木 そうそう。で、だめな会社はだめなんですけど、分からない会社は、自分がいいと思っても、いやそこはだめだという声もあって、事業がどうなっていくかは結局分からない。その分からないものに対してどういうフォーメーションという名のチームで取り組もうとしているかというのは見なきゃいけないんですよ。

長南 投資できないと思った起業家にはどのように接しますか。

鈴木 まずはちゃんと話を聞きます。その上でたとえばミーティングが1時間でその中で投資できないと思ったのであれば、ミーティングの中で投資検討はない、ということははっきりと言います。

長南 持ち帰って検討、ではなく。

鈴木 はい。だって時間の無駄じゃないですか、お互いに。辛らつなように聞こえるけども。

長南 うん。だからそこはビシッと断ると。人によって断り方は違いますよね。

VCの本分とは何か

長南 ベンチャーキャピタリストの社会的な意義っていうのは、僕らの共通認識としてはベンチャーキャピタリストの方ってこの4,5年ですごく熟成されてきたという感覚があって、これからまたもう少し成長していくというか、市場としては大きくなっていって、憧れの職業になり始めているじゃないですか。今後のベンチャーキャピタリストの役割というか本分というか、夢みたいなことはありますか。

鈴木 これは僕の勝手な思いですが、日本のベンチャーキャピタルの歴史って結局銀行とか証券会社とかの子会社からスタートしているはずなんですよ。お金を融資するかどうかを判断して、融資するには早すぎるから子会社からエクイティで投資をして成長させて、融資できる企業になったら親会社が貸し込んで儲けるっていう、グループビジネスですよね。そういった歴史的な流れがある中で、いわゆる金貸し業とか投資というところから、どんどん役割が変わってきている様な気がします。「お金はコモディティ化しています」という議論があったでしょ。でね、お金にね、色はあると思います。

長南 うん。全体にね。想いがね。

鈴木 そうなった時に、本当に起業家に対して、事業を知りもしない人が上からあれはだめだとかこれはだめだとか、こうしようああしようって言ったところで、僕はうまくいかないと思ってるんですよ。なぜならば、僕らって、いろんな企業とか起業家を見て、なんとなく成功しそうかとか、これやったらだめみたいなデーターベースが暗黙知のなかに積み上がってきたのだけれども、それが新しく投資した企業すべてに当てはめられるかと言ったらクエスチョンですよね。当てはまるかもしれないし、そうでないかもしれない。結局僕らって薄く広く企業を見て、いわば情報を溜め込んでいるだけですし、一方で投資される側の起業家というのは、本気でやってる経営者だったら、四六時中自分の会社のことをずーっと考えているわけですよね。人一倍、僕らよりも詳しくないと経営なんてできるわけがないと思っているんですよ。ということは僕らなんかよりも本当に自分の会社のことを考えているんですよ。だからこういうことをしなければならないというものが、意識レベルにあろうが無意識レベルにあろうが、すごくたくさんの選択肢があるはずなんです。それを僕らは引き出してあげなきゃいけない立場なんですよ、絶対に。

長南 選択肢を引き出す。

鈴木 引き出す。それを頭ごなしにこれやれって言ったら、視点はそこにしかいかないわけですよ。失敗するかもしれない選択肢でも、起業家がそれに向かっていくということは、決めてるのは間接的に僕たちっていう話になる。僕たちなんか薄く広くやっているというだけなのに一番深く考えている人が決めてない。

長南 納得感がないと。

鈴木 ない。仮に失敗した時に「なんかあいつ上手くいかなかったんだぜ」って投資家は言うだろうし、起業家も「言われてやったんですよ」みたいな。 だから分からないものに対して、どうしたらいいんだろう、これもやってこれもやった方がいい、こうしなきゃいけない、ああしなきゃいけない、とかで悩んでたくさん考えている起業家に、どれだけ考えているものを引き出して、どういう風にしていくのが一番良いんだろうかっていうことを聞いて、彼が一番良いと思ったことを応援してあげたいというか。

投資家インタビュー Vol.1 リード・キャピタル・マネージメント鈴木智也氏

鈴木 智也SUZUKI TOMOYA

リード・キャピタル・マネージメント株式会社 取締役 パートナー

一貫して新規事業創出畑を歩み、自らも起業経験がある。EC・ソーシャル・食といった分野に精通し、現在、ロコンド、Sumallyなどの社外取締役を兼務している。NTT東日本を経て、2001年、ベンチャー企業を設立、取締役に就任。富裕層へのコンシェルジュサービス事業を手がける。その傍ら、大手17社による新規事業創出コンソーシアムにも参画し、モビリティ、ヘルスケア、地方活性化などの幅広い分野における事業シーズ開発に従事。2004年株式会社エムアウトに入社。ペット保険大手への経営コンサルおよびフードEC事業の企画、開発、オペレーションなど社内外の新規事業育成業務を経て、2007年より現職。慶應義塾大学法学部法律学科卒。

投資家インタビュー Vol.1 リード・キャピタル・マネージメント鈴木智也氏

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