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INTERVIEWS WITH INVESTORS

(2016/1 取材)

経済と雇用をつくることが経営者の仕事

長南 投資のスタイルはどのような感じですか。気持ちで投資する人もいれば、計数管理でやる人もいらっしゃいますよね。加藤さんは、気合いで行きそうですが(笑)

加藤 僕はもう本当に社長のパッションと目線だけですね。シードはほとんどの場合、まだプロダクトがないフェーズにあるので、こういう会社をつくりたいというブループリントの目線だけで判断せざるを得ないんですよ。ご存知のとおり、特にスクラッチの段階ではピボットを繰り返すので、出資時と上場時でまるで違う商売になっているケースも多いです。僕が過去に出資して、その後上場した会社って9社あるんですけれど、出資した頃と上場時で同じ事業だったのは1社だけですね。だからこそ、投資の判断をするには、創業時の事業の内容よりも、社長の人柄や起業の動機を知る方が意味があると思うんですよ。

長南 「これをやりたい」って事業を立ち上げても、ピボットして変わることが大半ですからね。

加藤 変わるのが普通ですし、その方がむしろ健康的ですね。創業からそのままダーッと上場できたとしても、資本政策に苦労していない分、後から色んな矛盾が噴き出してメチャクチャになってしまうんですよ。自分が何に向いているのかは実際にやってみることでしか分かりませんし、経営者も資本の量に応じてできることが変わると知るものなので、何のために会社をやるのかという経営者の目線を僕は一番見ています。

長南 日本の場合は会社を粘り強くやる方が良いという風潮があったりしますし、優秀な人間が一社の中でピボットを繰り返すイメージですが、アメリカはプロジェクトとして会社を設立しているだけなので、だめならパッとやめて次に移るケースが多いですよね。アメリカでは前に事業を経営していたことを高く評価するとは言え、日本と比べるとドライなようにも思いますが、そのあたりはどう考えますか。

加藤 それもよく分かります。やっぱり日本の間接金融制度は連帯保証を前提としていて、一回失敗したらもう永遠にクロなんですよ。僕はベンチャーキャピタルがない時代に起業して、間接金融制度が前提の一発退場時代を長く見ているので、一回クローズさせてから再びスクラッチでつくることがいかに難しいかを自分なりに体験して知っています。結局それが、僕がシンガポールで直接金融をやっている理由なんですよね。

長南 経営者にしかできない仕事があるとしたら、何だと思いますか。

加藤 経済の創造と雇用の創出に尽きるのではないでしょうか。逆に言うと、会社そのものに固執して、経済や雇用をつくれないくらいにパフォーマンスを落とすのであれば、社会的に会社をやる意味がないですよね。

長南 会社という箱はあくまで手段の一つとして考える、ということでしょうか。

加藤 そうですね。僕は1990年代からもう20年近くエンジェルとして活動していて、特にITのセクターではかなり初期からやってきました。上手くいったところも、上手くいかなかったところも、たくさんありますけれど、「なぜあなたがその事業を興すのか」というところはいつも聞いています。失敗から学ぶことも多いですけれど、そこだけは変わらないですね。

投資家インタビュー Vol.10 エンジェル事業家 LENSMODE PTE, LTD.加藤順彦氏 経済と雇用をつくることが経営者の仕事

長南 今、何件くらい投資されていますか。

加藤 累積は60社くらいで、今も継続している会社は20社、シンガポールか日本の会社が大半です。その中でIPOした会社が9社ですね。一番最初が1998年のインターキュー(現:GMOインターネット)で、一番最近だと昨年の12月24日にソーシャルワイヤーが上場しました。その前が2005年のDeNAとザッパラスだったので、10年振りの上場だったんですよ。

長南 金額で言うと、投資の目安はどのくらいですか。

加藤 ボリュームゾーンは1,000万円〜1,500万円ですね。少ないものは100万円〜300万円だけれど、シリーズAくらいレイターになれば4,000万円張って、最終的に6%〜7%とか。

長南 最大何%までなど、保有する株式の比率は気にされていますか。

加藤 一応、上限は34%と決めていますね。基本的にはオーナー社長がいて、僕は独立取締役として、他の従業員取締役の方々とは違う立ち位置から会社の経営を考える形にしているので、34%以上は持ちません。マイノリティ・ステークホルダーなんですよ。

長南 そうすると、基本的にジャッジは経営者に任せて、最大限持っているところでは拒否権がある、と。

加藤 そうですね。

投資家インタビュー Vol.10 エンジェル事業家 LENSMODE PTE, LTD.加藤順彦氏

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