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INTERVIEWS WITH INVESTORS

(2016/1 取材)

入社1ヶ月で経営破綻。それでも、100回とも同じ選択をする

長南 加藤さんがダイヤルキューネットワークに入社した時、規模や経営状態などはどのような感じでしたか。

加藤 僕は1991年の3月に大学を卒業したのですが、その時CM事業部の部長で、部下が7名いました。会社自体の規模も70名くらいになっていたんです。ところが、その翌月にダイヤルキューネットワークが経営破綻してしまうんですね。親に出資してもらって、人生で一度しかない新卒を失って、家業まで継がなかったのに、自分の拠って立つものが全部なくなってしまったんですよ。結局、社員数を16名にまで縮小して、経営の受け皿会社となった徳間書店の子会社に移りました。敗戦処理ですね。人様に雇われたのは48年生きてきてその一回きりですけれど、徳間書店の子会社社員として仕事ができたのは良い経験でした。

長南 徳間書店ではどのような仕事をされましたか。

加藤 僕は映像の部門にいて、スタジオジブリや大映(現:角川映画)といった映画会社に関わっていました。『紅の豚』が公開された頃ですね。翌年、1992年の8月に僕は独立して日広という広告代理店をつくるんですけれど、そこで徳間書店グループにいた時の経験がすごく役に立ちました。

投資家インタビュー Vol.10 エンジェル事業家 LENSMODE PTE, LTD.加藤順彦氏 入社1ヶ月で経営破綻。それでも、100回とも同じ選択をする

長南 どうして独立されたのですか。リョーマの時の「全員社長になる」というところから、もう一度起業したい、自分で経営したいという思いがあったのでしょうか。

加藤 気がつけば起業していたって言う方が近いですね。もし一つでも理由があるとすれば、それは僕が徳間にいるアイデンティティを喪失してしまったからでしょうね。ダイヤルキューネットワークで担当していた事業を徳間でも継続していたんですけれど、その事業自体をやめることになって。それでもう会社も辞めようと思い、1992年の8月に退職しました。だから、徳間には都合1年5ヶ月しかいませんでした。

長南 積極的なスタートではなかったようにも感じますが、どうして広告業を選んだのですか。

加藤 広告なら仕事をくれる方がいたんですね。ツーショットダイヤルの業者でした。すぐに仕事があると分かっていたので、広告代理店とは何なのかということはあまり考えずに、仕事があるから会社をつくりました。25歳と4ヶ月でしたね。

長南 入社した会社が破綻したり、経営を引き取ってくれた別の会社に移ったり、自分で新しい会社をつくったり。色々とありましたが、ご両親にはどのタイミングで連絡されたのでしょうか。

加藤 いやぁ、できないですよね(笑)大学を卒業した後に親に連絡を取ったのは3年目、1995年でした。「お父さん、お母さん、お元気ですか?実は、ダイヤルキューネットワークは僕が大学を卒業した1ヶ月後に潰れています」と。人生で手紙を書いたのはそれ一回きりですね。

長南 手紙だったんですね(笑)面と向かっては言いにくいですよね。返信は貰いましたか。

加藤 すぐに電話がありました。安心した、大阪戻ってこいよって言ってくれて、すごく久しぶりに里帰りしましたね。

長南 (泣)今はもう良い関係なんですよね。最近も会ったりしますか。

加藤 もちろん。いまは大学の非常勤講師もやっていて、昨年は関西学院大学の商学部の開設100周年記念講演をやらせてもらったんですけれど、そこに親を呼んだんですよ。メダルまで貰って、親からすれば嬉しいことですよね。僕は家業を継がないという最大の親不孝をしたので、何をやっても免罪符程度にしかならないとは思いますけれど、これからも親孝行はやっていかなくてはいけないと思っています。

長南 親御さんも喜ばれたでしょうね。今となってみると、加藤さんにとって、やはり家業は継ぐ可能性もあったものだったのでしょうか。

加藤 100回あの時に戻っても、100回とも僕はワクワクする方を選んだと思いますね。自分の意思決定は1年かけて悩んだので、後悔していないですし、間違った方を選んでしまったとも思っていないです。そこに関しては、一点の曇りもなく自分の中で消化できています。ただ、僕は人生最大の懊悩の時に親の意向をフイにしてワクワクする方を選んでしまったので、家業を継がなかった自分というものを知っています。親の期待に背いてしまったとか、運命を受け入れられなかったとか、そういうことを背負っているんです。罪悪感ではなく、真剣に考えたからこそ、そういう自分が今いるっていうことですね。

長南 それが己を語る上で大事な根っこになっていますよね。

加藤 そうですね。今のエンジェル投資家としての活動にも繋がっています。僕は家業の承継と向き合う時間が長かったので、支援する人にも、「なぜ独立したいのか?」「なぜ家業の内容を変えたいのか?」とよく聞くんですよ。彼らがどこを見ているのかが非常に気になるんですよね。

投資家インタビュー Vol.10 エンジェル事業家 LENSMODE PTE, LTD.加藤順彦氏

加藤 順彦YORIHIKO KATOU

エンジェル事業家,LENSMODE PTE, LTD.

エンジェル事業家。LENSMODE PTE, LTD.

投資家インタビュー Vol.10 エンジェル事業家 LENSMODE PTE, LTD.加藤順彦氏

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