(2015/10 取材)
長南 最後に、起業家に対するメッセージみたいのがありますでしょうか。
川田 メッセージ…いやまぁ、「お疲れさまです」の一言です(笑)本当に大変なんで、あの人達はもう。
長南 投資するなら、学生だったり、ある程度サラリーマン経験があったりといくつかパターンがあると思うんですけど、どういう経験をしてきて欲しいというのはありますか。
川田 やっぱりダイバーシティが無い組織っていうのは、喧嘩別れになったり、共倒れするようなケースが多かったりするので、ちゃんとダイバーシティはあった方が良いかな。だから、エンジニアとビジネス系とか、男だけじゃなくて女性もいるとか、あるいは若者だけじゃなくてちょっとおじさんもいるとか。ダイバーシティがあった方が割と組織的にはちゃんとする気がしますね、粘り強いっていうか。
長南 起業にあたってよく聞く話で、最初の5人が大事、そして10人、15人みたいな話があると思うんですけども、やっぱりそういうものですかね。
川田 めちゃめちゃ重要ですよ。最初の10人。
長南 そこは時間かかっても良いから、良い人を採用するという感じでしょうか。
川田 でも、あんまり時間かけてられないから、すごく短期間でやらないといけない。だからもう、リクルーティングは結構重要な仕事ですよ。
長南 やっぱりリクルーティングは経営者の仕事ですかね。
川田 完全にそうだと思います。要は起業家、経営チームの手腕ですよ。ちなみに、僕は創業以来、年間で仕事をする時間の内、リクルーティングに使っている時間が、多分2割を切ったことはないんじゃないですかね。
長南 そうすると、川田さん人を見る眼は相当ですよね。
川田 いやそれはねー、難しい話ですよね!(笑)仕事って究極は一緒に仕事してみないと分からないので。
長南 そうですね。起業家と会ってそのまま投資を即決するみたいなことってあるんですか。先程のお話の様に、前から実績を知っていて人となりも分かっていてプロダクトも分かっている場合には投資できたと思うんですけど。
川田 もちろん、B/SとP/Lは見ますよね。一応ほら、株主構成見たりとか、そういうのはちゃんと見ておかないと、その場でサインとか、そういうのはないですよ。
長南 出会ってから投資までに至る期間について、今までで最短だったものはどれぐらいでしたか。
川田 早いところもありましたね。まだ会社ができたてで、営業マン1人か2人いたかいないかだけれども、売上がものすごいことになりつつあった。そこはわりと即決に近いですね。チームは整っていて、プロダクトが既に形になっていてもう初期の売上が立ち始めていて、売上の伸び方もすごかったし。
長南 あまり時間は関係無さそうですね。キャピタリストの人によっては人を見るって方も結構いるんですけど、まずはプロダクトを見て判断するというか人についてもプロダクトに出ているでしょう、っていう感じなんですかね。
川田 プロダクトがちゃんとしてさえいればというか、プロダクトができるっていう稀有な能力があった瞬間に僕の中ではバリューがあるんですよね。もちろん、明らかに怪しいにおいのする人とか、それは入れないですよ、もちろん。
長南 今は口コミ中心だから、ある程度スクリーニングもされているでしょうしね。
▲2015年グッドデザイン大賞を受賞した、パーソナルモビリティ「WHILL」を体験する川田氏
▼ ▼ ▼
今から30年前、日本にはエンジェル投資家がいないから、自分でまずなろうと考え、色々な経験をされてきた川田氏。以前の日本ではテクノロジーにお金が付かなかったこともあり、日本の家電メーカーの技術力の高さをより強く実感されている様子でした。現状の日本のTech業界をもっと盛り上げ、起業家やエンジェル投資家を増やさないと、世界における日本の経済力が低迷してしまうと警鐘を鳴らしている様に感じました。爽やかで優しい笑顔の中にも厳しい目が光るのは、川田氏にしか見えていない未来がそこにあるからなのでしょう。 お金が無くなったら、そんな川田さんへ是非ご相談ください。 本インタビューにご興味を持たれ、川田尚吾氏とのコンタクトをご希望の方は、下記からお問い合わせください。
川田 尚吾氏KAWADA SHOGO
株式会社DeNA共同創業者
東京都立大学大学院にて博士(工学)を取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、1999年にディー・エヌ・エーを共同創業。以降COOとしてサービス開発、システム開発の統括、営業部門立ち上げ、マーケティング統括など一連の事業立ち上げをリード。2008年に非常勤取締役、2011年より顧問。現在は日米欧のスタートアップへの投資、支援を中心に活動。
*本記事の内容は2015年10月取材時点のものに基づきます。所属、価格、企業名など時期により異なることがありますので、予めご了承ください。