(2015/9 取材)
長南 日本のVC業界が成長してきていて、成熟して新たなステージに入ったと思っていますが、今後VC業界で変数を1つ変えることによって、VC業界がもっとよくなるなとか、起業家や社会のためになるなというのは、投資をしていてどこかありますか。
桑園 やっぱりファンドのサイズと、ファンドの期限。すごい短期間で回収しようとすると、投資家サイドが思った感じのリターンにならないし、起業家サイドも短い間に無理して結果出さなきゃいけないなって感じになるんじゃないかな、と思っていて。
長南 長いと、上下の変数が多くなってくるじゃないですか。不確定要素が。
桑園 景気のサイクルを1回超えられるじゃん、長いと。今の10年くらいのを15年にするとかね。
長南 ただ、今度はLPとの兼ね合いが出てきますよね。
桑園 そうそうそう。その上に、返さなきゃいけないリターンも大きくなっちゃうんだけど。
長南 そうですね、300%くらいですかね。
桑園 例えば今、BtoBとか、クラウド系とかをやっていると、売上が小さい状態で上場早めにするか、充分な売上をちゃんと確保した上で大きく上場するか、皆悩んでいます。そういうのも、ファンドのサイズをもうちょっと大きくして、ドンとお金を入れて、積み上げ型だから、長く時間を取れば必ず上に行くじゃないですか。スピードは加速させた上で上場させた方が良いんじゃないかなって思うことが結構多いです。短期集中型は逆に早く出ちゃえばいいんじゃない?
長南 変化球はありだけど、長期的に見た場合はもうちょい長く見てもいいんじゃないってことですかね。長く見れるような期間で判断する、できる期間があった方がいいと。
桑園 実質、最初の組み入れ期間が3年、4年だとすると、4年目くらいに投資した会社は、ファンド期限が残り5〜6年でそのタイミングだとあんまりアーリーステージってできなくなってくるから。
長南 そうですよね。今のVCのスキームだと、ポートフォリオが50億円になって投資期間が終わったとすると、あとはIPOかM&AなどでEXITするじゃないですか。そうすると、案件ごとにお金を返していると思いますが、そういう意味では、LPとしても良いってことですかね。
桑園 そうそう。IRRって意味だと、どうやってるか分かんないけど、この案件投資しますってキャピタルコールすると、その時から彼らの投資期間の計算が始まってそれを返すまでの計算を積み上げるので。
長南 短いお金もありますよね。
桑園 そうそう。短くなるから。IRRの倍率は変わらない。案件ごとに、もうちょっと長く見れる案件もあっていいのかなって気はするけど、全部じゃなくても良いと思う。
長南 起業家へのメッセージとか、どういう人を求むとかありますか。VC業界のつんく♂として(笑)
桑園 言いづらいよ(笑)メッセージとしては、会社を大きく伸ばしてほしい。長く続けていくっていうのも大事だと思うので、やってることがまるっきり変わってもいいから、上場して50年くらい続く会社に。
長南 上場志向あるんですね。
桑園 うん、ある。まぁIPOの時に株式は全部売れるなら売るけど、会社としてはね(笑)
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丸の内ビルの眺めのよいオフィスで出迎えていただいた桑園寛之氏。10数年来の付き合いですが、当たりの柔らかな印象は変わらず、良い意味でのいい加減さが熟成されてきたなと感じました。冷静さと起業家を長期的に応援していきたいという真摯さに改めて、良いベンチャーキャピタリストだと感じました。 本インタビューにご興味を持たれ、桑園寛之氏とのコンタクトをご希望の方は、下記からお問い合わせください。
桑園 寛之氏KUWAZONO HIROYUKI
日本ベンチャーキャピタル株式会社 執行役員
2009年6月 日本ベンチャーキャピタル(NVCC)入社 2014年6月 執行役員就任 NVCCでの主な投資先にキュービーネット、gumi、メタップス、チームスピリット、grooves、スマートインサイトなどがある。 NVCC入社前は旧日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)にて前半5年間銀行業務全般に従事し、後半9年間はベンチャー投資に従事。
*本記事の内容は2015年9月取材時点のものに基づきます。所属、価格、企業名など時期により異なることがありますので、予めご了承ください。