(2015/9 取材)
長南 年々割合はM&Aが増えてきている印象ですが、まだ8割〜9割くらいがIPOなんですよね、日本の場合は。投資した企業の内、どのくらいがIPOやM&AなどのEXITができるものですか。リターンのイメージも含めて教えていただきたいのですが。
今野 うちはコスト回収以上のリターンで終わるのが6割強ぐらいですね。1割がゼロに近くなる。
長南 M&Aの場合も結構あるのでしょうか?
今野 最近のファンドですと、ポジティブリターン案件のうち、IPOとM&Aの比率が2:1ですね。他に、持分移動のケースもありますね。
長南 でも、経営者が買い取るってことはほぼないですよね。持分移動だから、他へ移る。昔あったけど、今はあまり聞かなくなりましたよね、株式を経営者に売るって。
今野 ありますよ、うちも。
長南 それはもう安い金額で売って?
今野 まぁもう、そこはしょうがない。経営者の財布のある中で。
長南 そこで少しでも高く売ろうとはならないですか。
今野 もちろん仁義でっていう意味では一定はあるかもしれないけど、ないものをどこかしらから集めてきてでも、っていうのはね。それこそレピュテーションリスクが高いんじゃないかな。その時は良くても、他にも波及する。
長南 高く買うって人が他にいて、でも経営陣が他に売りたいという場合って一番難しい判断だと思うんですけど、その場合はどうしていますか。リターンだけを考えたLPへの責任から考えると高い方に売るっていう話はあるかと思うんですけど。
今野 基本的には高い方にはなるように努力しますが、過去、多少の差であれば会社のその後の価値も考えて低くしたことはありますね。
長南 逆に、レピュテーションリスクのこと、今後のことも考えたら、中々手荒な真似はできなですよね。
今野 そうですよ。あとやっぱり、起業家もしくは社員が望まないところに売ってしまったら、売った瞬間に辞めますから。そうすると、買い手からのレピュテーションリスクがあるわけですよ。こんな良いこと言って他より高い方出したのに、初日から誰もいないじゃん、みたいな。
長南 従業員の反対がある中でやったら、みんなアンハッピーになってしまいますね。
今野 そう。だから結局は円満なM&Aしかやらないんですけど、その円満になる方向にギリギリまで頑張るっていう。
長南 それは、会社が今後上手くやっていけるように願って売る、みたいな感じなんですか。ひいては、社員と経営者のことを考えてと。
今野 まぁ、そうですね。低かろうが高かろうが、そうですね。
長南 今はほとんど投資の際の株式は種類株式でしょうか。
今野 うん。普通株式はほぼないです。プレIPOのトレードセールくらいで。
長南 これ以上増資すると持株比率が薄まってダイリューション起こしちゃうから、経営者がVCに譲渡するケースもあると聞いたことがあるんですけど、そういうのってありますでしょうか?
今野 ケースバイケースではありますよ。結局、レイターステージだとフェアバリューでもバリエーションがそれなりについてくるじゃないですか。例えば50億円って値段がついたとすると、少額の出資でそこから倍率がそれほど出ないと意味がない、っていう話になるから、結果的に5億円くらいのロットになってくるわけですよ。でも、もうキャッシュフローが回っていると5億円も必要ない場合、条件が合えば、経営陣や既存株主からの持ち分移動を受けたりもします。
長南 優先株式と普通株式とでバリエーションの差はつけますか。アメリカでは10倍ルールとか言って、結構差をつけていたこともあるようですが。
今野 バリエーションは基本そこまで変えないです。ケースとしては、MAX20%の差くらいでしょうか。
長南 アメリカの倍率の方が大きいんですかね。
今野 SO(ストック・オプション)は違いますよ、安くしてあるケースもありますけど。
長南 SOの場合は普通株式ですよね、基本。
今野 そうそう。僕らの場合、ダイリューションの方にコンフリクトがあるから、値段に関しては割当てられた方のリターンも考えてSOは安くしても構わないよって言ったりもする。でも、同一ラウンドで、普通株式、優先株式みたいなトランザクションがある時はやっぱり20%くらいにしておかないと、税務リスクもありますし。
長南 残余財産分配請求権がシビアなのでもう少し広げても良さそうですが、確かに会社のステージが後ろになってくると、倍率広げるのは難しいとは思いますね。