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INTERVIEWS WITH INVESTORS

(2015/9 取材)

投資家インタビュー Vol.3後編 グロービス・キャピタル・パートナーズ今野穣氏 投資家インタビュー Vol.3後編 グロービス・キャピタル・パートナーズ今野穣氏

上場の意義とエコシステムから見たM&A

長南 GCPとしては今までVCとしてどういうことを目指してやっていきたいのでしょうか。

今野 アメリカが全ての前提とは思わないですけど、アメリカは9割がM&A、1割がIPOですからね。日本は逆。やっぱりその構造っておかしいと思っていて。インターネット関連の会社ってほぼスケールメリット、資本主義そのものなので、基本的に小さい会社は残らないんです、いつかは。言葉は悪いけど、「そんな事業を一つの会社でやっていてどうするのか」っていう会社が上場しても、グローバル競争では誰の役に立ってるかがよく分からなかったりする。ある意味、個人のモチベーションよりもそっちの方が大事だと僕としては思っていて。「どうするの、全てのサービスがUSのサービスになったら」って。もうほぼなっていたりもするけど。「日本株式会社」っていうのも沈没するよ、っていうのを僕は危惧しているので、どちらかと言えば日本の経済のエコシステム全体として勝てるためにはどうするかというところを考えています。勝っている会社の競争力を増すようなM&Aがもっと増えないと、小さいマーケットで小さな小競り合いをしても仕方がないよね、っていう話。

長南 それはサービスそのものもそうだけど、人材という意味も含めてですよね?

今野 もちろん。逆に言うと、今まで日本でM&Aが何で少なかったかって言うと、非英語圏の小さいマーケット、日本でしかできないマーケットのサービスって、買い手からするとユーザー持っていれば自分達でできるようなサービスが多いんですよ。だから結局M&Aに値段がつくっていうのは、自分達にできないものを先にやられちゃったから、Make or Buyで時間を買う。アメリカでは脅威になりそうな競合を阻止しにいくっていうのもありますけど。そういうのがやっぱり中々日本って作れていない。

長南 買うのに足るビジネスがないのか、売り買いがないのかで言うとどちらでしょうか。

今野 これも語弊がある言い方になってしまうけど、上場できてしまうから上場すると言うか、上場のハードルが低く見られてしまうのも良くない、と言う話ですね。裏を返すと上場前のグロースキャピタルがないっていう我々の責任ということにもなるんだけど。

長南 IPOするには世界で一番ハードルが低いとも言われることもあるみたいですしね。

今野 もちろん、僕らとしてもリターンの出す流動性のあるタイミングが早く来ると言うのはマーケットとしてありがたい話ではあるんだけれども、エコシステムで考えればシリーズC、Dが少ない。IPOの1つの目的って資金調達なのに、その資金をB/Sに載せられない使い方をしたら、赤字転落になってしまう危険性がある訳で。それでは日本の未成熟な投資家には受けないわけですよ。そもそもマザーズのマーケットの投資家を見ても個人のデイトレーダーが殆どなので、ちょっとしたきっかけで一気に株価が下がってしまうわけですよ。そうすると、上場の意味って何なんでしょうかね、っていう話の方が大きくて。そのゲームを分かった上での決断をしないと。小さく生んで大きく育てるっていう考え方もあるけど、それはそれでゲームのルール分かってやってるのであれば良いよ、っていう話で。

長南 今だと「シリーズA、次に上場」みたいなケースも少なくないですよね。もうちょっと大きいところをやるべきだっていうことですかね。そういった環境を与えてあげる、そういう道があるっていうのを思い描かせてあげるとか。

今野 マザーズがあること自体はオプションの1つという意味では決して否定されるものではないけれど、オプションではなくて、9割方はもうIPOマストな道みたいに、上場できる時に上場するって考えてしまっている。

投資家インタビュー Vol.3 グロービス・キャピタル・パートナーズ今野穣氏 上場の意義とエコシステムから見たM&A

長南 バリエーションで言うとどれぐらいで上場するのが理想、というイメージはありますか。

今野 すごくシンプルです。100億円を下回ったら、上場維持コストの方が上回ります。で、300億円を超えないと、機関投資家が入ってきません。そうすると、デビューは100億円超えないと意味が無くて、1〜2年後に300億円を超えていないとそれも意味がない、とも考えられる。

長南 確かに300億円がひとつの目安ですよね。1,000億円ってなると結構ハードル上がってくるなとは思うんですけど。

今野 300億円ですね。できれば250億円くらいから積極的に機関投資家に入ってもらえると。まぁ、百歩譲って成長性のある200億円ですかね。

長南 そうなると、東証一部に直接上場する基準くらいってことですね。

今野 まぁ、そうですよね。元々は東証一部に行かないならマザーズに上がる意味がないというか、準備市場ですから。

長南 バリエーションが低くても上場する意義は、そこで資金を手にした経営者が、応援する側に回る人も出てくるところかな、と思っているんですけど。IPOで10億円のお金を手にした人がエンジェル投資家になって、1社当たり500万円〜1,000万円ずつくらい投資していく、みたいな。裾野が広がるかもね、っていうくらいですかね。

今野 それをやるなら、M&Aで売った方がいいんじゃないか、とも思いますけどね。事業が好きな人は、1回失敗しても次から次へとやっていくじゃないですか。ああいう人は売ることに全然抵抗がないでしょうね。ちゃんと冷静にEXITのオプションとして判断できると思いますよ。

長南 おそらく、事業を次から次へと創造することが楽しみなタイプの起業家ではなく、1つの事業に固執しているタイプの起業家の方は売りにくいでしょうね。そういう意味では、VCの方が適切なM&Aを推進していることが、日本のエコシステムを支えているとも言えるっていうことですよね。おそらく、このミドルのところで。

今野 まあ、実際今は1年に数件しかないけどね。ないって言っていても仕方がないので、1個1個作るしかないですよね。

長南 そうやって積み上げていけば、年々増えていきますね。

投資家インタビュー Vol.3 グロービス・キャピタル・パートナーズ今野穣氏

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