NAGAKOSHI−株式会社長越|次の一手を見つけるための「経営ガイド」サイト
INTERVIEWS WITH INVESTORS

(2016年 取材)

投資家インタビュー Vol.12後編 ジェネシア・ベンチャーズ田島聡一氏 投資家インタビュー Vol.12後編 ジェネシア・ベンチャーズ田島聡一氏

合いそうな起業家がいれば、自分から事業のアイデアを提案する

長南 投資したい起業家の理想像はありますか。

田島 その質問を割とよくいただくのですが、サイバーエージェント時代から一貫して、「大きなキャンパスに緻密な字が書ける経営チーム」と答えています。大体の場合、大きなキャンパスを選ぶ人は字が大きくなりがち、つまりとても大きなビジョンを描いていても、戦略が粗くなりがちだったりします。その一方で、緻密な字が書ける人は比較的小さなキャンパスを選ぶ傾向にあって、大きなビジョンを描くのがあまり得意ではない印象があります。事業を成功させる上で、これらの能力を全て1人でカバーする必要は全くなく、ビジョナリーな経営者と実行力があり緻密なCOO、といったように、相互を補完し合うバランスの良い経営チームが強いのではないかな、と個人的には感じています。

長南 投資の相談に来た時点でまだチームがなく、起業家一人だった場合はどうしますか。気にせずそのまま投資するのか、チームができるまで待つのか。

投資家インタビュー Vol.12 ジェネシア・ベンチャーズ田島聡一氏 合いそうな起業家がいれば、自分から事業のアイデアを提案する

田島 チームは事業を進める中で探していけば良いと思いますが、起業家とエンジニアなど、少なくとも2人はいる状態で投資するようにしていますね。やはり1人だと精神的にきつかったり、事業を冷静に見られなくなったりすることも多いので。後は、起業家の本質的な欲求とチャレンジする事業内容がしっかりフィットしているかを重視しています。

長南 クラウドワークスの吉田さん(吉田 浩一郎氏、株式会社クラウドワークス 代表取締役社長 CEO)がそうですよね。クラウドソーシングビジネスは田島さんとのディスカッションから生まれたアイデアで、田島さんがいなかったらクラウドワークスはなかったとおっしゃっていて、吉田さんも感謝されていらっしゃいました。シリコンバレーに御一緒させていただいて、そこには弁護士ドットコムの元榮社長(元榮 太一郎氏、弁護士ドットコム株式会社 現代表取締役会長)やgroovesの池見社長(池見 幸浩氏、株式会社grooves 代表取締役 共同創業者)、その当時まだ大学生で就職をどこにするか悩んでいたクラウドワークスの成田副社長(成田 修造氏、株式会社クラウドワークス 取締役副社長 COO)などと現地を回った時に毎晩飲み明かしていたことが深く刻まれています(笑)

田島 吉田さんは、自分がチャレンジする事業領域について、色々な起業家やベンチャーキャピタリストとディスカッションをされていたようなのですが、たまたま僕もそのうちの一人でした。さまざまな海外サービスをリサーチする中で、日本でチャンスがありそうな事業領域をいくつか提案したのですが、その中の一つがクラウドソーシングでした。吉田さんがこれまで経験されてきたことや人生を賭けてでも実現したい世界観がばっちりはまった感じだと思います。

そのミーティングの数ヶ月後には、野村さん(野村 真一氏、現クラウドワークス 開発担当取締役)や佐々木さん(佐々木 翔平、元クラウドワークス 取締役)をはじめとする優秀なチームを集めていて、巻き込み力と実行力の高さに驚いた記憶があります。また、クラウドワークスは、私がサイバーエージェント・ベンチャーズの代表となってからの第1号担当案件だったこともあり、とても思い入れのある投資でしたし、上場承認が出た日のことは今でも忘れません。今になって過去を振り返ると、吉田さんという起業家に出会い、シードラウンドで投資させていただけたことは、ベンチャーキャピタリストという仕事の本当の魅力や奥深さに気付かせてもらうことができた、私にとって本当に大きな出来事でした。吉田さんには今でもたまにお会いしていますが、本当に感謝しています。

長南 なるほど、そうですよね。起業家に対して、そういったアイデアの提案はよく行われるのでしょうか。

田島 ビジネスアイデアをいくつかストックしておいて、方向性として合いそうな起業家がいたらこちらから提案することはあります。普段から日本や東南アジア、北米のスタートアップを普段からウォッチしているのですが、中には日本でもやっていけそうなビジネスモデルが割とあったりしますので。

長南 確かに、優秀な起業家に可能性のあるビジネスをやってもらえば、最短最速で成功する確率が高まりますからね。何より、社会のためになりますし。

田島 お金を出すだけだったり、提出された事業計画を添削するだけでは、投資家からたくさんの投資オファーが来ている優秀な起業家からは選んでもらえないですね。起業家に対して、少しでも提供価値を出していかないと、僕ら自身の存在意義があまりない。だからこそ、日々勉強ですね。起業家とのミーティングの前には、その事業領域について事前に予習してからお会いするようにしていますが、それでも自らの無知を痛感しますし、起業家から本当に色々なことを教えていただいています。

投資家インタビュー Vol.12 ジェネシア・ベンチャーズ 田島聡一氏

田島聡一氏とのコンタクトをご希望の方はこちらから
s.tajima@nagakoshi.co.jp

PAGETOP

PAGE TOP

PAGE TOP