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INTERVIEWS WITH INVESTORS

(2016年 取材)

サイバーエージェント・ベンチャーズにて、未来の可能性に投資

長南 さくら銀行の次はサイバーエージェントに移られていますが、意思決定のタイミングなどはどのような感じでしたか。次に何をするかは分からなくても、銀行を辞めることはもうはっきりと決めていたのか、辞めるか悩んでいたけれど、たまたまサイバーエージェントからオファーが来て意を決したのか。最もお堅い会社の一つである銀行から、最も柔軟なIT企業への転職というのも、当時は珍しかったですよね。

田島 どちらかと言えば前者ですね。一度全ての制約条件を外して、自分自身がどこまで成長できるかチャレンジしてみたい気持ちがあったので、いくつかの企業とお話させていただいており、実は内定も数社いただいていました。30歳を目前に控え、肩書きが付いてきたタイミングでもあったので、給料がぐっと昇給したことも転職への後押しとなりました。皮肉な話ですが、これ以上給料が上がっていくと、周りの先輩のように自分も辞められなくなるな、と。

長南 確かに、お金に縛られる感覚でいると、そのうちに年齢が上がって市場価値が失われてくる可能性はありますね。他人がつくったルールや制約条件の中で戦うのか、自分自身があるべき形を思い描く中である程度の自由度を持って全力で戦うのか、ですね。サイバーエージェントにはご自身で応募されたのでしょうか。

投資家インタビュー Vol.12 ジェネシア・ベンチャーズ田島聡一氏 サイバーエージェント・ベンチャーズにて、未来の可能性に投資

田島 幸運なことに、知人を介してサイバーエージェントの藤田さん(藤田 晋代表取締役社長)や西條さん(西條 晋一氏、現Xtech株式会社 代表取締役CEO)にお会いする機会をいただきまして。当時、「金融×IT」をやる戦略子会社として株式会社シーエー・キャピタルをゼロから立ち上げているタイミングだったこともあり、金融知識と野心を持った30歳前後のメンバーを探していたようで、本当に幸運でした。

長南 当時は西條さんが代表を務められていましたよね。他にはどのような方がいらっしゃいましたか。

田島 当時の直属の上司は、堤さん(堤 達生氏、現グリーベンチャーズ株式会社 パートナー)でしたね。共に働いたメンバーで言えば、菊池さん(菊池 誠晃氏、現株式会社リアルワールド 代表取締役社長)、和田さん(和田 圭祐氏、現インキュベイトファンド 共同創業者兼ゼネラル・パートナー)、石丸さん(石丸 文彦氏、現アコード・ベンチャーズ 代表取締役 Founder&CEO)やサトマキさん(佐藤 真希子氏、現iSGSインベストメントワークス 取締役 代表パートナー)などですね。

長南 今、ベンチャーキャピタル業界を先導する錚々たる方々ですね。 一つのところにずっと留まるのでなく、外でも活躍されることで、その後の業界全体の活性化に繋がっていますね。アメリカの西海岸がそのような印象ですが、結局はヒトとヒトとの信頼関係でビジネスも成り立つことは多いと感じます。 サイバーエージェント・ベンチャーズは当初、ITの総合金融のような体を成していたと思いますが、現在の会社の形になるまでにはどのような展開があったのでしょうか。

田島 当時は、投資顧問業、外国為替証拠金取引(FX)、ベンチャーキャピタルの3事業をやっていたんですけれど、投資顧問と外国為替証拠金取引は事業売却して、現在はベンチャーキャピタル事業だけが残っています。僕は、2010年に西條さんから引き継ぐ形でベンチャーキャピタル事業(現サイバーエージェント・ベンチャーズ)の代表となりました。

長南 銀行にいらっしゃったので、金融の知識は充分にあったと思いますが、ITに関してもそれなりに詳しかったのでしょうか。

田島 サイバーエージェントにジョインした当時は、ITどころか、インターネットに関する知識が全くなくて、「2ちゃんねる」すら知らない相当アウェイな状態でした(笑)。本当に少ない金融の知識と経験だけでジョインしたんですよ。

長南 それは意外ですね。最初の上司である西條さんも商社からITという流れで、ビジネスに対するコミットというか、執念がものすごかったとお聞きしています。時には、部下との激しい密着したやり取りもあったそうですが、実際どのような感じだったのでしょうか(笑)

田島 えっと、もちろん優しかったですし、とても尊敬しています(笑) 当時の僕は、「制約条件(ルール)の中で最大のアウトプットをする」という銀行のやり方に慣れてしまっていて。サイバーエージェントは、成果を最大化させる事業デザインを描くプロセスの中で、自らがルールを創っていく、起業家精神に溢れた組織カルチャーなのに、自分の中で知らず知らずのうちにリミッターを掛けてしまっていたんですね。そういうこともあって、自分の中における考え方のルール・チェンジを消化するまでは、本当に苦しかったです。


注意というか、指摘というか、西條さんにも本当によくご指導いただきました。この時に大きく自分自身の考え方をチェンジできていなければ、間違いなく今の自分は存在していないと思います。

長南 中々そこまで真剣に接してくれる方に出会えないですものね。その分すごく勉強になったでしょうし、覚悟も決まりそうですね。田島さんが尊敬するキャピタリストを挙げるとしたら、やはり西條さんですか。

田島 西條さんは恩師のような人なのでもちろん尊敬していますけれど、西條さんはキャピタリストというよりも、起業家タイプだと思います。キャピタリストで言うなら、赤浦さん(赤浦 徹氏、インキュベイトファンド 共同創業者兼ゼネラルパートナー)や仮屋薗さん(仮屋薗 聡一氏、グロービス・キャピタル・パートナーズ マネージング・パートナー)ですね。他にも、日々学ばせていただいているベンチャーキャピタリストは本当にたくさんいます。そういう意味では、本当に恵まれた環境ですね。

長南 お二人の投資パフォーマンスは圧倒的ですね。赤浦さんは大きく包み込む感じで、仮屋薗さんはグリーをはじめとしてITの黎明期から投資実績があり、中長期で物事を見定められていますね。人としても余裕があるというか、柔和な方ですね。

田島 そうですね。キャピタリストとしての力量やトラックレコードももちろんそうですが、お二人は日本のベンチャーキャピタル業界そのものを創ってこられた方なので。起業家や投資家との向き合い方も含めて、本当に色々と学ばせていただいています。

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